なんだかモヤモヤする映画

公開前から楽しみにしていた映画『カセットテープ・ダイアリーズ』を観てきました。しかし鑑賞後の心はなんだかモヤモヤ。ボス(ブルース・スプリングスティーン)ファンの自分には到底納得できない部分の多い映画だったので、ブログにまとめてみます。

 

映画『カセットテープ・ダイアリーズ』

ブルース・スプリングスティーンのロックに乗せて贈る青春音楽映画!1980年代後半のイギリス。パキスタン移民の少年がスプリングスティーンの音楽に影響を受けながら成長していく、実話から生まれた感動の物語。

カセットテープ・ダイアリーズ http://cassette-diary.jp/ (公式サイトより)

 

1. ジャンル差別が酷すぎる

冒頭に流れるのはペット・ショップ・ボーイズが1987年にリリースした『It's A Sin』。それはこんな風に歌われています。

僕がこれからすることも
僕が行ったどんな場所も
僕がこれから行く場所も
それは罪なんだ

その後に流れるのはCutting CrewとA-ha。小気味好いシンセサウンドです。そして映画の主人公はこういいます。

「シンセが未来だと思ってるようじゃ、どうしようもないね」

音楽のジャンル差別、それこそが罪なのです。

 

2. ボスの音楽が時系列に並ばない

映画は1987年から始まるお話。この年の10月にボスは8枚目のスタジオアルバム『トンネル・オブ・ラヴ』をリリースするのですが、劇中その話には一切触れられず。普通に『ザ・リバー』や『明日なき暴走』の話しか出てきません。

ボスのファン、ましてや80年代のボスを知っている身としては、ボスの新作リリースとなれば大事件。まずここに焦点が当たらないのはおかしなお話。旧作の話ばかりで新作をスルーするのはどういうことでしょう。ましてや『トンネル・オブ・ラヴ』は前作『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』とのあまりの違いにファンが驚いたというのに。

ちなみに劇中でボスがイギリスにツアーでやって来る!というくだりは『トンネル・オブ・ラヴ』リリース後の1988年『Tunnel of Love Express Tour』のことです。

 

3. それ以降のボスの歴史的大事件も全スルー

『Tunnel of Love Express Tour』のあった1988年7月19日、ボスは西側のアーティストとしてはほとんどはじめて東ドイツで大規模なコンサートを開きます。ベルリンの壁が崩壊する16か月前のことです。

そのコンサートにはロックに飢えた東側の若者が30万人以上集まったと言われています。わたしも映像を見たことがあるのですが、すさまじい人の波でした。途中からコンサート会場ではゲートが取り払われフリー状態だったのだとか。

そういったロック史上、ボス史上の歴史的大事件も映画では触れられず。その後の1988年後半アムネスティ・インターナショナルのツアーもスルー。どういうことでしょう。当時あれだけ話題になったのに(アムネスティのツアーでは来日もしています)。

 

4. 結果ボスの歌詞を描写しただけの映画になってしまった

主人公の内面を曲の歌詞で表すというのは音楽映画の常套句ですが、上記したようなボスの歴史的事実にまったく触れられていないので、都合よくボスの音楽をカット・アンド・ペーストしただけに見えてしまった。

推測するに、映画の製作スタッフが当時のことを知らなすぎたのでは?

あの時代を描いていて、ボスを題材にしていて、『トンネル・オブ・ラヴ』と東ドイツコンサートとアムネスティ・インターナショナルツアーをスルーとかちょっと考えられない。Eストリート・バンドを率いた最後のツアーでもあったのに。

 

まとめ

音楽に詳しければ詳しいほど、スプリングスティーンのファンであればあるほどなんだかモヤモヤする映画、それが『カセットテープ・ダイアリーズ』。スミスやモリッシーのくだり、彼女の元彼のグラジオラスのエピソードなんかはとても面白かったけれどね。